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【インタビュー・アート】インタビュー/あいちトリエンナーレ2019芸術監督 津田大介氏 2019.8特集

いよいよ始まった「あいちトリエンナーレ 2019」今年は初めて豊田市が会場となりました。
その魅力と見所について津田大介芸術監督に伺います。

[インタビュー完全版]TAP MAGAZINEに掲載できなかった部分も含めたインタビュー完全版となります

 

1.なぜ豊田があいちトリエンナーレ2019の会場になったのですか?
―2010年の初回は名古屋会場だけだったあいちトリエンナーレですが、2回目以降は岡崎や豊橋などの三河地域でも展開しています。できるだけ幅広い地域でトリエンナーレを展開したいという愛知県の方針もあり、名古屋市外の会場として、今回は豊田市が選ばれました。

豊田市が選ばれた理由として
豊田市美術館という、日本でも有数の現代美術館がある
② 名古屋・豊田間は公共交通機関が整備されており、移動の利便性がある
③ 市として開催に意欲的で、作品作りや会場選びで協力や支援が期待できる
ラグビーワールドカップ豊田市美術館でのクリムト展などがトリエンナーレと同時期に開催され、相乗効果が見込める
といったことが挙げられます。

 

2.豊田では会期中どんな展開が期待されますか?
高嶺格さんが旧豊田東高校の25メートルプールの床を剥がして立て、石碑に見立てる作品(インタビュー時点でタイトル未定)を制作しています。間違いなく豊田会場を象徴するスペクタクルな作品となることでしょう。

豊田市美術館でも粒ぞろいの作品が揃い、館内で最も大きな展示室1では、子どもから大人まで幅広く楽しめる間口の広い作品が展示される予定です。

個人的に楽しみにしているのは、まちなか展開です。駅前の展開はかなりバラエティがあり、“インスタ映え”することは必至な小田原のどかさんの彫刻をはじめ、広場を彩る大規模な壁画も制作される予定です。トリエンナーレ終了後もレガシーとして残したいという思いはありますが、現在調整中です。街の風景がアートによって変わり、外から人を呼び込む新たな観光資源となれば、豊田市トリエンナーレを展開した意義も大きくなるので、駅前の作品群はぜひ注目していただきたいです。

大正期の代表的な町屋建築「喜楽亭」を使ったホー・ツーニェンのインスタレーションも要チェックです。アジアの歴史をモチーフにした作品で高い評価を獲得してきたツーニェンは、これまで美術館のホワイトキューブで展示されることが多かったのですが、今回は初めて歴史的建造物のなかでインスタレーションを構築します。これも見どころの一つです。

 

3.豊田においては近年、アートに限らず様々な文化活動が市民によって活発に行われ、トリエンナーレでのとよトリ隊など自分たちで何かをしたい、というモチベーションが盛り上がっています。あいちトリエンナーレ2019が終わった後も、継続して市民のモチベーションを維持していくために必要なのは何だと思いますか?
―「あいちトリエンナーレ2019」芸術監督を引き受けてから、国内外の様々な芸術イベントを見て回りました。主にこの2年間で取材して回った先は、以下の通りです。

北アルプス国際芸術祭、大地の芸術祭の里夏2017、横浜トリエンナーレ2017、Reborn Art Festival、札幌国際芸術祭2017、第57回ヴェネツィアビエンナーレドクメンタ14、ミュンスター彫刻プロジェクト、奥能登国際芸術祭、大地の芸術祭の里秋2017、カオス*ラウンジ新芸術祭2017、瀬戸内フラム塾(全3回)、Media Ambition Tokyo 2018、アートフェア東京2018、大地の芸術祭雪花火、Art Basel 香港2018、六本木アートナイト2018、第10回ベルリン・ビエンナーレ大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ2018、光州ビエンナーレ2018、釜山ビエンナーレ2018、アートフェア東京2019、第58回ヴェネツィアビエンナーレ

特に、大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ2018では、総合プロデューサーの北川フラムさんに2週間同行させてもらい、たくさんのボランティアの活動を目の当たりにすることで、とても大きな学びを得ました。

その学びの一つに、「芸術祭の影の主役はボランティアだ」というものがあります。

アーティストは、テーマに沿って作品を作ります。しかし、アーティストも作品も、その芸術祭が終わったときに、別々の場所へ帰ってしまいます。でも、ボランティアはそうではありません。芸術祭が終わっても、ボランティアはそのまちに暮らし、まちと関わり続けます。もっと言えば、世界中で行われているどの芸術祭も、その地域の歴史や文化と無関係でいることはできません。

アーティストが地域資源を掘り下げて作品を作るとき、その独創的なアイデアと地元の魅力をつなげる重要な役割を果たすのが、地元にお住まいのみなさんだと言えます。トリエンナーレビエンナーレがさまざまな地域を活性化させたように、市民のまちづくり活動が活性化するのは、定期的に文化イベントを行うという枠組みをどう、市民が中心となってつくっていけるかにかかっています。

豊田市にはモチベーションの高いボランティアさんが多くいて、ポテンシャルは非常に高いと思いました。

あとは、その市民のやる気に対して行政がどう応えるかです。前例や四角四面な価値観に囚われず、市民の自由な発想を生かし、裁量を与えるようなボトムアップ型の文化事業を継続的に行うことが中長期的にその地域に資することになるのだと思います。

 

aichitriennale.jp

津田大介(ジャーナリスト/メディア・アクティビスト):

1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学文学学術院教授。メディアとジャーナリズム、著作権、コンテンツビジネス、表現の自由などを専門に執筆活動を行う。

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