TAP topics

TAP/とよたアートプログラム

【コラム・音楽】20世紀~現在、世界~豊田の「音楽」をグーグルアース的ズームアップで見てみる/清水雅人 2019.7特集

 20世紀の文化芸術はアメリカを抜きにしては考えられない、特にポップカルチャーにおいては。20世紀のアメリカの芸術がそれまでと違っていたのは、それらは芸術としてではなくビジネス/エンターテイメントとして世界に拡がっていったということだ、資本主義というツールを携えて。
 アメリカを語る時によくする質問がある。世界中でもっとも食されている料理はなにか?フレンチ?中華?最近は日本食だって、、、答えはアメリカ料理。アメリカ料理なんてあるの?ハンバーガー、ホットドッグ、ポップコーン、そしてコーラ。アメリカの凄さ/怖さは文化だとは気づかすにいつのまにかすっと生活の一部になっていることだ。

 19世紀末~20世紀初頭、西洋音楽・楽器と黒人のリズム・ビートが融合してジャズミュージックが生まれ、瞬く間に浸透し、コンサートやライブが各地で開かれるようになった。カントリー、ブルース、フォーク、R&B、ロック、、、、様々な音楽ジャンルがそこから派生し、ポップミュージックを形成していく。
 それらの音楽はラジオを通して拡散していった。ラジオで使われたのはレコードだ。レコードは、1950年代まではあくまでもプロモーション用に過ぎなかった。ビジネスのメインはコンサート/興行であって、レコードはコンサートにお客を呼ぶための、本人たちが行って演奏しなくもラジオで曲を流してもらう手段でしかなかった。人々はラジオで音楽を聴き、コンサートに行った。
 しかし60年代から逆転が起こる。録音技術が上がり、機材も進化し、ミュージシャンたちはまずはレコードを作るようになった。レコードは芸術作品とみなされる場合もあった。ミュージシャンはアーティストと呼ばれるようになった。レコードを作り、レコードを売るためにコンサートをするようになった。レコードはコンサートに行けない場所、全世界の人々に音楽を聴かせることができ、ビッグビジネスとなった。
 やがてレコードがCDにかわっても様相はそれほど変わらなかった。日本でも90年代には100万枚以上売れるCDが続出した。
 しかし、90年代末をピークにCD売り上げは減少に転じる、世界的に。音楽コンテンツはデータ化されダウンロード等データで売買されるようになり、やがて売買すらされなくなった。今や月々いくらかの金額を払えば数万曲の音楽を聴くことができる、あるいは無料で聴くことができアーティストは広告収入の一部を受け取る。
 その一方でライブやフェスは増えた。ライブ興行数、観客動員数、市場規模は2000年代以降2~3倍になっているという報告もある。人々は無料同然で音楽を聴き、そのアーティストのライブやフェスに行く。

 時代がひとまわりしただけなのか?新しい局面に入ったのか?進化を続けているのか?それはわからない。この先どうなっていくのかもわからない。ただ1つ言えることは、人が音楽を求めることは多分なくならないだろうということだ。

 私は1960年代末に生まれ、レコード~CDを聞いて育ってきた。十数曲収録されたアルバムをトータルな作品だと思っていたし、CDが売れなくなったと聞くのは悲しかった。しかし、ちょっと俯瞰で見てみれば、そんなレコード至上主義はほんの数十年間のできごとだったことがわかる。

 豊田で定期的にライブ/生演奏を聴けるお店、場所が増えてきている。ライブは名古屋や東京のライブハウスやホールに行くもの、こんな地方都市にいるミュージシャンはアマチュアだ、それも固定観念に過ぎないのかもしれない。

 スマホで全世界の音楽を聴き、たまには名古屋や東京のライブに行き、年に何回かはフェスにも行く、でも明日は近くの飲食店にライブを聴きに行く、週末には駅前のライブイベントを覗いてみる、ちょっと気になったアーティストがいたのでそのアーティストの動画を検索してみる・・・。
 そんなふうに音楽を楽しめるようになるのって悪くないなと思う。豊田がちょっとそういう感じになりつつあると思う。
 まずは、そうなってきていることに気づいてみて欲しい。

 

清水雅人(しみずまさと)
映像作家・プロデュ―サ―。豊田市出身・在住。豊田市役所職員時代に市役所内に映画クラブを結成し、30歳の頃より映画製作を開始。映画製作団体M.I.F.設立、小坂本町一丁目映画祭主宰。2013年市役所を退職、独立し、映像制作、イベント企画、豊田ご当地アイドルStar☆T(スタート)プロデュースなどを手掛ける。豊田星プロ代表。映画「星めぐりの町」を実現する会会長、とよた市民アートプロジェクト推進協議会委員。

豊田ご当地アイドルStar☆Tオフィシャルサイト

f:id:toyotaartprogram:20190702121002j:plain