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【インタビュー・アート】豊田市美術館ガイドボランティア座談会「美術館の展示のチカラ」2019.6特集

いよいよ豊田市美術館がリニューアルオープン。昔から美術館を知る豊田市美術館のガイドボランティアのみなさまにその魅力を存分に語っていただきました!

 

豊田市美術館、いよいよリニューアルオープンですね。
S 照明が変わったそうですよ。 少し前のTーFACEで開催された「ふらっと美術館」の能勢学芸員の講座の中でリニューアル後の建築の話が出ました。ホワイトキューブの真っ白さが、LEDに変えてさらにすっきりとした白になったようです。
―さらに美しい展示室に…!そして7月23日からはクリムト展も開催されますね。
O クリムトって日本人は知らない人多い印象がありますね。
K 日本にある有名なクリムトの油彩画って2点しかないんですよ。
愛知県美術館にあるのが1点《人生は戦いなり(黄金の騎士)》と豊田市美術館にあるのが1点《オイゲニア・プリマフェージの肖像》のみ?
S 美術館にあって公開している縦1mを超すような大きい油彩画はその2点しかないんです。
O 日本中で愛知県に2点。もう少し小さなものは他にもあるんですけど。 ピカソとかゴッホとかは知ってる人多いけど、それに比べるとクリムトはまだ認知度が低いんじゃないかという印象がありますね~。
―《接吻》は有名ですよね。
K 去年ウィーンに行ってお腹いっぱいになるくらいクリムトを観たら「やっぱりいいな~!クリムト!」って思いました。ああ、こうやって描いたんだろうなっていうのが本物をみるとひしひしと伝わってくるんですよ。今回、《接吻》は来ないけど、《ベートーベンフリーズ》が来るでしょう?
S 複製ですけど、細部に至るまで忠実に再現されているみたいです。楽しみですね!
O 本物は分離派会館(ウィーンにあるセセッション館)の地下にあるんですよ。印象派の画家と比べて日本では知られてないかもしれませんが、ウィーンではクリムトってすごいスターなんですよね。クリムトとシシィ(エリザベート皇妃)とモーツァルト、この3人は3大スターって感じです。
K 本当にそう!シシィは超美人でした
豊田市美術館の魅力って?
S 建物かな?でもそれだけじゃなくて美術館の空間全体が魅力では。同じ谷口吉生氏設計の建築でも豊田市美術館より新しい建物もあるけれど、例えば張り紙とか、「これここに貼っちゃダメだな…!」っていうのがあったりする。豊田市美術館はよその美術館に比べて、張り紙しないとか、ゴミ箱置かないとか、建築の美しさに対して邪魔にならないように気をつけていると思います。まあ大雨の時にたまに傘入れとかポリバケツみたいなのが出てる時もあるけど(笑)オープンの時の空気を保っているというか。
K 庭の管理大変でしょうね~。広いもん!
O 本当によく手が入ってますよね。庭は谷口さんがよくコラボしていたアメリカのランドスケープデザイナーのピーター・ウォーカーという方がデザインした贅沢な庭なんです。
S 上から見ると、庭のところから上の池の中の床石の色とメタセコイヤの地面とが一本になって市松模様になって、シマシマシマシマ~って繋がってるの。谷口さんの建築と合わせて美しいんです。
O すごく凝った庭なんです。空撮でみるとわかる。でも空撮した写真見たことある人は少ないのでは(笑)
豊田市美術館はこれからどうなっていくと思いますか?
S うーん
O 難しい(笑)
S でも、美術館の約3500点のコレクションは豊田市のお宝としてしっかり所蔵庫に入ってるわけで。それを増やしながらしっかり展示していくことは大切ですよね。だから美術館として「ホワイトキューブの空間や壁に展示する展覧会」というのは、私はまだまだ続くんじゃないかと思うんです。壁に絵画をかけて空間に彫刻を置くっていういわゆる純粋な鑑賞体験を追求した展示はなくならない気がしますね。
O うんうん。
S 各地でやっている芸術祭や、前回のトリエンナーレの古民家やまちなか展示をいっぱい見た後に豊田市美術館で開催された「蜘蛛の糸展」を観て「やっぱり美術館の展示っていうのは、美しいな」って思いました。
K 特に展示室1の天井の高い空間。あれだけの空間を持っている美術館は少ないですよね。
O 高さ9.6mあるんですよ!
K 本来はあの天井の高い展示室1から4までを常設展にして、企画展は展示室8の方で、という設計コンセプトなのだけど、企画展を行う作家さんは展示室1から展示室4までの展示室を使いたいとおっしゃる方が少なくないと聞いたことがあります。
S 私も聞いたことありますね。企画展は1階の大きな展示室8。常設展を展示室1から4と階段の上を個性豊かな展示室にしてコレクションを展示するっていう。「1作家複数収蔵」がコンセプトのコレクションを重要視する美術館だからこそですね。天井が高かったり、外光が入ったり、きっと作家さんにも魅力的な空間なんでしょう。
O その展示室1は床面積だと他の展示室より狭いくらいですが、9.6mの高さのため大空間に感じますよね。忘れられない過去の展覧会で、展示室1の広い空間にポツンポツンと2、3作品だけあって空間全体が作品となるような展示は魅力的でしたね~。
S 同感です!コレクションと建築空間がマッチした美しい展示をみたいです。それから豊田市美術館の独自の企画展も見逃せません。最近だったら「蜘蛛の糸」「ビルディングロマンス」「奈良美智」展は私の大好きな展覧会です。最近は作品を「見る人」が主役と言われ、作品ガイドボランティアとして豊かな鑑賞のお手伝いを目指して活動していますが、「見る人」が主役になるにはやはり何よりも優れた企画や作品の力があってこそだと私は思ってるんですよ。

 

お話を伺った皆様
O さん 豊田市美術館ガイドボランティア一期生
S さん 豊田市美術館のベテラン・ガイドボランティア
K さん 名古屋市美術館を経て現在は豊田市美術館のガイドボランティア

Toyota Municipal Museum of Art 豊田市美術館

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